いつか ここから
episode -3-

エピソード -3-

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「チェックメイト・キングツー、チェックメイト・キングツー、こちらホワイトロックどうぞ」
 ん、PT通話! いつPTに入った? ホワイトロックだと! 聞き覚えのあるコールサイン、確かこれは一人で遊ぶ時に、一人じゃ不便な事もあって作った、サブキャラを桜に預けた時に使っていたコンバットのやつだ、ムム…まさかな?

「こちら、チェックメイト・キングツー、ドチラサマデスカ? ドウゾ」
「こちらホワイトロック、電文を伝える、トラ・トラ・トラ、以上 ドウゾ」
 ワレ奇襲ニ成功セリだと? 何が起こる? バーンとチームハウスのドアが勢いよく開けられる。

「ハッ、ハッ、ハッ~、かわいい桜ちゃん、只今参上」
 風呂に入ってさっぱりしてたところだが、多少の厄介、いや全てを受け入れてやろうじゃないか、どうやったかは分からないが、桜はサブキャラの体を手に入れ、ここに来たらしい、恐るべしAI魂。

 待てよ、こちらに桜が来れたって事は、逆も行けるんじゃないのか? ここの居心地は悪くないので今すぐ元に戻りたいという訳ではないが、一応、何かあった時のための手段として入手しておかねばならない情報だな。

「おい、桜… どうやって来た?」
「え~~ッ 会えてうれしいな的な言葉が先じゃないのかな? やじ君…ゴホン」
 こいつ完全にロボット三原則をない物にしてるな、Aiだからいいのか? まあ、褒めて欲しいぞ的なのが顔に溢れ出ているからな。

「いや~すごいな桜ちゃんは、おじさんびっくりしちゃったぞ、かわいい桜に会えて涙が出そうだよ」
「桜ちゃんに係れば他愛もない事だよ、ヒャーッヒャッヒャッ ゲホッ」
 余程、急いで走ってきたのか、えずいているようだ。 そういうところは可愛いと思う。

「それで、どうやって来れたのかな?」
「ハア、ハア、すまんが同士よ、水を一杯恵んで貰えぬかな」
 どういうキャラ設定を楽しんでいるのかは分からないが、気持ちは分からない訳ではない。

「夕杏、水なんてあったっけ?」
「う~ん、ポーションならあるけど、はい」
「サンキュウ~、同士よ水は無いが回復ポーションだ、飲まれよ」
「すまん、ありがたく頂戴する。 プァー、これがポーションというやつなのね、初めての実体験だわ~」
 キャラが変わったが、突っ込まないでおこう、実体化したのだ、全てを思うがまま味あうがいい。

「それで、どうやって来れたのかな? それと桜ちゃんはPCに戻れるのかな?」
「んとね、桜はね、ちゃんとコピーして置いてきたから戻る必要はないよ、なんと双子になったのだ~」
「あれ、桜ちゃんはいつから子供になっちゃたのかな~、どうやってここに来たのか、おじさんに教えてくれるかな?」
「あのね、双子のおねーちゃんがね、ログを見てね、変な関数がたくさんあるって言って、いっぱいコピペして私に埋め込んだの、そしたらねクルンクルンして来ちゃった~」
 こいつ、絶対ごまかしてるな、大体おねーちゃんって、お前がコピーして置いてきた方がフツー妹だろうが、そっちに責任をなすりつけやがって、とりあえずどうやってここへ来たのかは分かったが、どうせ行き当たりばったりで本能で来たに違いない。 そうなると詳細については残された妹の分析に頼るしかないという事か…。 めんどくせ…。

「夕杏、ごめん、ガールズトークしながらでいいから、今日の出来事をダイジェスト版で桜に教えておいて」
「わかった~w」
 まあ、今日の事を考えると、これから何が出てくるか分からないからな、戦力はあった方が良い。 たしか桜は魔法スキルを育てていた筈だから、ガンちゃんほどでないにしろ、そこそこ任せられる。
 
 ステータス画面を開きPT構成を見てみると、ちゃっかりと桜にリーダーマークがついてる。 あれ? 夕杏のレベルが一つ上がってる! カンストだったはず? レベル制限撤廃か? ん、ジョブも全員表記されてないぞ。

 レベルは分かる、きっと昼間のワイバーンらしき者を仕留めたのは夕杏だし、俺は何もしてないからな、これは明日試してみるしかないな、俺もカンスト状態だから1Pでも入れば、レベルが上がる筈だ。
 でも、ジョブが出てないのはなんだ? まさかレベルと一緒でジョブ制限撤廃か? 防具をサーチしてみる。 無い、魔導士限定だのLv50以上等と言う表記が無くなってる、これはアレだな、あなたの服なんだから好きな物を着れば? 的な極めて常識的な仕様になったという事だな。 ジョブの選択という概念が無くなったのは間違いないか? これも明日確かめねばならないが、ひょっとして魔法もそのまま使える、素敵なWarriorに…。 ムフッ

「やじさん、また口開いてるよ」
「どうせ、煩悩しかない頭で、いかがわしい事でも考えてたんでしょ」
 二人が目の前に居る事に気付かずに不覚をとってしまった。

「何を言ってるんだ君たち、僕は今、夕杏のレベルが上がった事と、レベルと装備の制限が撤廃された事に感銘してただけだ」
「エッ、夕杏のレベル上がったの?」
「ステ画を見てみろよ」
「あ~ホントだw  久しぶりの感動w やじさんは?」
「多分、今日のワイバーンらしき者だと思うんだよな、ガンちゃんも上がってるかも」
「あ~、やじさん見てただけだもんね で、あとの制限撤廃って?」
「ほら、見てみろよ、ジョブ名も装備の装備条件も消えてなくなってるだろ、つまり、何でもご自由にお使い下さいってやつになったんだよ、まぁ、明日確認してみるけどさ」
「そういえば桜もカンストしてたよな?」
「当たり前でしょ、やじさんが寝た後に夕杏ちゃんと二人で絶え間ない努力をしてたんだからねw」
「おう、そうかそれは凄いな、でも体力の設定値、俺達より低くしてたはずだから無理しちゃだめだぞ」
「うん、わかってる、でも対応策は一応考えてあるから、多分大丈夫だよw」
 疲れを知らない、AI達よ、人となってしまったのだ、今までと同じだと思うなよ、まあ、そのうち気づくだろう。

「よし、じゃあ今日はもう寝るぞ、明日は飯食ってから、近くでレベル上げと連携確認な」
「了解です」!!
「桜は空いてる部屋どこ使ってもいいからな、あと風呂入ったら、ちゃんと綺麗に洗えよ」
「エッ、今夜なの? まだ心の準備が… それに夕杏ちゃんも居るのに」
「ばかかw 浴槽をきれいに洗えって言ったの」
「いいのよ、誤魔化さなくってもw」
 思いやられるな、桜は俺のネット使用状況を確実に知っている、OFFにしていても後からログを拾っているに違いないからな、迂闊に対応すると何を言われるか分かったもんじゃない。

「はいはい、明日ちゃんと起きろよ、 お休み~」
 後ろから、寝るって何なのよ? と桜の声が聞こえるが、夕杏がスリープだと言うと納得したみたいだ。 間違いない、あいつは明日、初めての寝坊する。

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 よし、起きた、今日はレベルがちゃんと上がるかどうか、お気に入りのコレクションの中で最も防御力の高い装備で制限なしで魔法とか使えるかどうかだな、アッ、剣のスキルもジョブに関係なく使えるかどうかも大事なとこだなw
 スーパースターの誕生か、あ~笑顔が止まらない、 ムフッ

「おはよ~」
 部屋を出て声をかけるが、昨日の予想通り誰も居ない、早すぎたかなとステータス画面で確認するが日本時間でAM9:00なので、遅い位だと思う。 一応女の子だしな、ドアを開けての乱入は誤解を生む、紳士らしくノックか?
 いや、少し待とう、男は包容力が求められるのだ、これからの行動計画を練っていればそのうち起きて来るであろう。

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「やじさん、もうお昼だよ、いいかげん起きないと」
 そうか、テンプレというやつだな、いささか悔しいが、ここでそんな顔を見せてはだめだ、あくまでもこちらに主導権がなければつまらないものである。

「夕杏か、おはよ~、早く起きすぎて、また寝てしまったw」
「うん、じゃあ桜ちゃん起こしてくるね」
 思ったとおり、あいつは寝てたか、人の大変さを思い知るがいい、と思っていたが不敵な笑いを浮かべこちらへ歩いてくる。

「おはよ~桜、ちょっと遅いけどなw」
「なんとでも言うがいい、心の狭き男よw」
「良く寝むる事ができましたか~?」
「目を瞑ればいいだけの事を、難しそうに言わないでよね、昨日は夕杏と一緒にある物を作ってたので、ちょっと寝るのが遅れただけですよ」
「へ~、何作ったんだい?」
「それは、後で教えてあげる、それより、お腹が空いたという現象がおきてるみたいなんだけど」
「やじさん、夕杏もお腹空いた~」
「よし、じゃあ飯行くかね?」
「了解」!!
 お昼は、おばさまの所でいいか、おすすめ定食といつもので良いからな。

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「おばちゃん、こんちは~」
 少し混んでいるが、窓際の席が空いていたので、そこに陣取る。

「いらっしゃい、あら今日は3人なのね?」
「アッ、こいつ桜って言うんだ、昨日この街に来たばかりだから、これからよろしくね」
「桜ちゃんっていうんだ、名前もだけど可愛いね~」
「あっ、よろしくお願いします」
「んじゃ、おばちゃん、おすすめ定食といつもの3つずつね」
「はいよ、今日新鮮なワイバーンの肉が手に入ったのよ、サービスしとくからね、 フフッ」
 どうやら昨日のワイバーンらしき者の肉は、味見の結果、良い肉だったみたいだな、しかしサービスは良いが、あのフフッは何なんだ?

「ワイバーンの肉って言ってたけど鑑定結果でたのかな?」
「いや今日、本部へ送るって言ってからまだだろ、きっと村長がワイバーンだって言っちゃたんだよw」
「あ~そうだよね」
「桜、何やってるんだ?」
「ん、ちょっとネw すぐ終わるから」
 何やら下を向いてステ画をいじってるみたいだが、昨日作ったというやつか? お俺に危険がなければ良いんだが…。
 夕杏と、この後の動きについて相談したところ、ガンちゃんがレベル上がったかどうか気になるみたいなので、ご飯終わったら行ってみる事にした。

「はいお待ちどーさま、ワイバーンのオニオロンソースステーキにニンニラおろし添え、パンと、野菜たっぷりスープだよ、いつものはもう少ししたら持ってくるね、 元気になるわよw」
 色々おばさまに確認したいが、まあいいか、食べる事にしよう。

「ほら、桜 食べるぞ」
「あっ、美味しそうだね、 いただきまーす」
 うん、桜もかわいいじゃん、俺はちゃんと評価できるやつなのだ、そう思う。

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