いつか ここから
episode -4-

エピソード -4-

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 昼ご飯を食べながら考えたが、やっぱり狩りに行ってモンスターを倒してみる方が先だなと思った。 レベルが上がるのを確認したかったし、その他もろもろもそうだ、ギルドには夕方にでも行った方が、鑑定結果が来てる可能性が高いし、と夕杏と桜を丸め込め、了承を取って近くの鉱山系の迷宮へと向かった。

 ここは3層目に金属のゴーレムがポップするので、弱点さえ突かなければ長持ちしてくれる、なので剣や魔法の試し射ちにはぴったりだ。 もちろん殴ってもらえれば防具の性能も確認できる、まあ、魔法は使ってくれないんだけど、他の結果から想像できるだろう。

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「3層迄、転移するぞ、3.2.1.0で転移棒にタッチだぞ!」
「了解」!!
 一度攻略すると、その階まで転移できる迷宮特有の装置だ、プレイヤーに便利なように配置されたものだが、光ってるので今も稼働してる筈だ。

「あっ、リーダー桜じゃん、桜が起動しないと」
「ん、そうだっけ、んじゃ3・2・1・0で行くよ」
「了解」!!
 視界が歪むが2秒程で転移が完了する、転移部屋は安全地帯なので特に注意する事は無い。

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「久しぶりだな、ここ」
「最初にもぐった迷宮だもんね、ちょっと懐かしいかも」
「さっきも言ったけど、まずは俺と桜のレベルが上がるか確認するので一体目は瞬殺でOK、2体目からは弱点を突かないで、各自、高位の剣スキルが、ちゃんと使えるか確認するんだぞ~」
「分かってるわよ、魔法も試すんでしょ?」
「そうそう、偉いな桜ちゃんは」
「夕杏は悪いけど、魔法の発動時間に誤差がないか確認しといてくれ」
「は~い」
 1時間ほどの狩りで8体のゴーレムと戯れることが出来た。 結果を簡単に言うと、どんな武器でも憶えていたスキルが使用でき、魔法も使えたし発動時間も変わりはなかった。 もちろん討伐ポイントもPTで配分され、俺と桜のレベルはめでたくレベルが1つ上がったのである。

「よし、これで切り上げよう、あとは、ギルドに行ってガンちゃんのレベル確認しようぜ」
「は~い」
 実に素直でいい娘達だ、いつもこうであって欲しいものだね。 うん。

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 ギルドに着いてから、ガンちゃんに鑑定結果を聞いたところ、本部でも正確な鑑定が出来なかったそうだ、そりゃそうだろ、ここに居ない筈のモンスターなんだから。
 それで結局空を飛んでた竜族と新たに認定して、仮ではあるがワイバーンとして新種登録したそうだ。 どうでもいいが村長のいい加減に言った一言が認められた記念日となったのは間違いない。

「ねえ、ガンちゃん、最近変わった事なかった?」
「うん? 特にないが、なんかあったか?」
「いやね、昨日ワイバーンを倒したろ、なんと夕杏のレベルが上がってたんだ、それで、もしかしてガンちゃんも上がってるんじゃと思ってね」
「レベル? 俺は確か150で打ち止めだったはずだぞ」
 げっ、150って殆んど無敵だろ、プレイヤーは99でカンストなんだから。 

「あらら、151になってるわw どうすんだコレ?  ん、魔法創造初級ってスキルが増えてるぞw」
「ねえ、ガンちゃん…ずっと友達でいようねw」
「そういえば、そっちの娘は?」
「あ~ごめん、桜って名前で、俺と同じところから昨日、来ちゃった」
「桜で~す、よろしくw  桜ちゃんって呼んでもいいよ」
「よろしくね、桜ちゃん。 夕杏ちゃんが言ってたもう一人のやじさん…、って、同じところから来ちゃったって、いいのかそれで?」
 仕方がないので、昨夜の出来事を説明する事になったのは、言うまでもない。

「ふ~ん、やじさんもいろいろ大変そうだな、でも、可愛い子が増えるんなら俺は大歓迎だよw」
「ま、なんかあったらよろしく頼むよ、ガンちゃんw」

「あ~、そういえばギルド本部から、鑑定結果と一緒に、やじさん達と俺宛の依頼書が混じっててな、他の所でも空を飛ぶモンスターを見たって通報があったらしく、経験者の俺たちに調査して欲しいって事なんだが、どうする?」
「へ~、場所は?」
「分からん、受けるんなら本部に来いってさ」
「今度もワイバーンとは限らないんだよな?」
「空飛ぶモンスターだけじゃ、答えようがないけど、場所が違うなら出るものも違うかもなw」
「ねえ、やじさん、行こうよw」
「行こうよ~~♡」
「話聞いてなかったのかよ? ワイバーンじゃないかもしれないんだぞ」
「ワイバーンクラス以上だったら、レベル上げには最適じゃないですか」
 ウッ、いいなそれ。

「あら、お顔が嬉しそうね、それにガンちゃんとやじさんが一緒なら、桜達、安心ですわ」
「おい、言う事をちゃんと聞けるんだろな?」
「あら、今まで聞かな事ってあったかしら?」
 う~ん、ギリギリねーか?

「と言う訳なんで、行きます」
「じゃあ、今日はもう夜だから明日の朝、向かおうか?」
「了解、じゃあ9時ころ、ここに来るわ」
「あ~、それでいいぞ~」
 という事で、夕飯を喰ってチームハウスへと戻ってきた俺は、あの事を思い出した。

「おい、おねーちゃんの方の桜ちゃん、昼間いじってたやつの正体をそろそろ教えてもらえるかな?」
「あら、ちゃんと憶えてたのね、そして、その、しつこいそうな言い方はストーカーの素質、十分ってとこかしら」
「あれ~、明日の依頼は、確か… 経験者って書いてたって言ってたような気がしたな~」
「ちょ、丁度言おうと思ってたところなの、私達、気が合うわね」
「夕杏も聞いた方がいいのか?」
「そうね、先に寝てもらったから、その方がいいわね」
「おーい、夕杏、発表会だってさ」
「あ~ 完成したんだ~w」
「うん、何とかね、 まずコレ、渡しておくわね」
 桜は俺たち二人に4つのボタンの付いた四角で薄いリモコンのようなものを差し出した。

「それ、リモコンね、 ステータス画面でもできるけど開く面倒がなくていいでしょ」
「桜先生、よくわかりません」
「やじくん? これから説明するんだから、今は分からなくても良いのよ」
 こんな欲望のままに生きる男に、例え最初だけとはいいつつも育成された事が悔やまれる桜だった。

「じゃあ、始めるわね、これはステータスポイントの総量を維持しながら、体力・腕力・魔力・物理防御・魔法防御・異常耐性に振分け操作できるイコライザーよ、すでにリモコンのBボタンには体力と物理防御を極振りでセットしてるわ、Mは体力と魔法防御、Iは異常耐性と魔力、Kは腕力と体力をセットしておいたわ、そして効果時間は10秒……、10秒経つと本来のステータスに戻るわ、それと各ボタンを長押しして、ステータス画面で微調整後にボタンを押せば再セットできるわ… … どう?」
 どう? と聞かれたがどう答えたらいい? 夕杏はキョトンとしているが多分理解してるだろう、とりあえず褒めておくべきか?

「桜先生!」
「ハイ、やじ君」
「使用方法と効果については分かったんですが、どのようにして、この素晴らしい事にお気づきになられたんですか?」
「ハハハ、良い質問ですね、やじ君… これはあなたのおかげでもあるんですよ」
「と、申しますと?」
「この可愛い桜ちゃんがここに来た時に、あなたは、桜の体力設定が低いから気を付けろとおっしゃいましたよね?」
「あぁ、そう言ったかも」
「その時、桜ちゃんは思い出したのです… こちらに来る時に、これでもかって位に細かく寸断され、この世界で再構成される時に感じたステータス配分の確定コマンドを垣間見た事を…、だからあなたに告げる事ができたのです、体力の設定値の低さを何とかできる、対応策があると」
 どうしてこいつは、いちいちキャラ設定を求めるんだ? そういえば、こいつ巫女さん仕様の防具は無いのかって、いつだか騒いでたな、設定としては嫌いじゃないがどうしよう?

「桜殿、それは正しく、神託? ではありませぬか?」
「ヌッ、やはりそう思うか? いや、ただの偶然じゃ、偶然」
 なるほど、さすがAiだな、冷静に状況を掴んでいる、そうかシステムコマンドの一部が解析できたって事だな。

「それで、なかなか使い勝手が良さそうだけど、クールタイムはあるのか?」
「理論上システム自体には無いんだけど、体の方が耐えられるかどうかが心配な所ね? あとで、やじさんで実験しようと思ってたのよ」
「なるほど、俺か、」
 例えば、スキルポイント総量を1000として、一つ当たり166だろ、残りを二つに絞って上乗せしたら3倍か…きついかもな、2倍位に再設定し直そう。

「桜、実験するのは良いけど、最初は2倍くらいがいいんじゃね?」
「大丈夫よ、桜と夕杏ちゃんは1.5倍に抑えておいたから」
 やはり、2倍程度にしておこう、開発者の意見は尊重しなくてはならない、短時間でも攻撃力や防御力が2倍に跳ね上がるのは凄い事だ、文句は言うまい。

「じゃあ、桜は基本の体力を俺たち位に変更できたって事でいいんだな?」
「うん、魔力は少し下がったけど、これからレベルが上がれば取り返せるわ」
「だなw」
 レベルが上がれば、それに伴ってステータスも上昇していく事になる、それは良い事なのだが、いったい誰のために? なんの為に? ってつい考えちゃうよな~。

「それと、ちょっといいか?」
「うん?」
「これを仮にブーストイコライザーと名付けよう」
「うん、いいねw」
「だが、これは俺たち以外の人が居る所では、なるべく使用しない事としたい」
「秘密にするって事?」
「うん、只でも通常よりレベルが高くて、ここに居るはずのないモンスターが現れて、同じような俺と桜が居るんだ。 ガンちゃんは今のところ信用してくれてるみたいだけど、それはまだ俺たちがガンちゃんよりレベルが低いからだと思う」
「なるほど…、私達がどう思おうが、力を出し過ぎると勘ぐられるって事ね?」
「そうだ、俺と桜はまだ1日分の信用しかないんだって事さ」
「じゃあ、仕方ないわね」
「え~、分かったけど、夕杏だけ仲間外れなの?」
「そうだ、だが俺たちに何かあった場合は、お前だけが頼りになるんだぞ」
「まぁ、それなら我慢するかな?」
「まずは、今度の調査を無難にこなして、ギルドの信頼を得る事にしようぜ」
「了解」!!
 でも、こいつは便利だな、防御系だけ上げとけば、安心して眠れそうだからな、桜に感謝だ。今日は酒飲んで寝よw

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